
メジロマックイーン──白い伝説と、不滅の枠連神話
天皇賞・春、菊花賞、有馬記念──幾多の名勝負を制した白い閃光、メジロマックイーン。
だが彼の強さは、単なる脚力だけではなかった。
"1枠・5枠・8枠"──数奇な符号をまとい、競馬ファンに奇跡を見せ続けた白い王者の物語。
いま、再び彼の伝説を紐解こう。
目次
天皇賞・春、菊花賞、有馬記念──数々の名勝負を制したメジロマックイーン。
しかし、彼の強さは単なる脚力だけではなかった。
枠だ。
1枠・5枠・8枠。この3つの枠は、マックイーンが出走しただけで、なぜか絡み始める──
これは偶然か? それとも競馬の神が仕掛けた“暗号”なのか?
いま、マックイーンの枠伝説が蘇る。
第一章 菊の季節に咲いた、白い幻影
その年の菊花賞、人気を集めていたのはメジロライアンだった。
武豊が乗り、皐月賞3着、日本ダービー2着の実績。華も実もあった。
対するメジロマックイーンは、地味な存在だった。祖母には名牝メジロアサマの血、確かに良血。けれど、その走りはまだ“証明されていなかった”。
それでも──
ラストの直線、ライアンが脚を伸ばす、その外から、
白い影が一閃。
マックイーンは、菊の舞台で覚醒した。
実況が叫ぶ。「マックイーンだ!マックイーンだ! メジロでもマックイーンのほうだ!」
ゴール板を駆け抜けるその姿に、
俺の中で何かが静かに燃え始めた。
その日から、俺の心に一頭の馬が住み着いた。
名前を、メジロマックイーンという──。
第二章 春──トウカイテイオーとの邂逅
菊の季節に咲いた白い幻影──メジロマックイーン。
あの一戦で、確かに俺たちは覚えた。この馬は、本物だと。
そして迎えた春。
京都競馬場、天皇賞・春。
舞台に立つのは、またも"怪物"だった。──トウカイテイオー。
父はシンボリルドルフ、無敗で二冠を奪ったサラブレッド。
その天才児が、満を持して古馬に挑む。
スタンドには割れんばかりの歓声が響く。
みんなが見たいのは、トウカイテイオーの伝説の続き。
だが──その期待を、粉々に打ち砕いた馬がいる。
白いシャドーロール。
大きなストライド。
そして、異様なまでの粘り腰。
──メジロマックイーンだった。
レースは淡々と進み、
マックイーンは息を潜めながら、
やがて直線でグイと前へ出た。
トウカイテイオーも伸びた。だが届かない。
勝ち時計──3分17秒8。当時の世界レコード。
──ああ、こいつは、歴史を変える。
そんな確信だけが、胸に宿った。
はっきり言うが、トウカイテイオーも伝説級の馬だ。
後のレースが、それを物語っている。
しかし、淀3,000の経験はトウカイテイオーにはない。
競馬には、絶対はない。しかし、ルドルフには、絶対がある。
偉大な父が与えた過剰な人気だったと思う。
テイオーには、3,200Mは長かったのかもしれな
そして「枠」の伝説へ──
「1枠・5枠・8枠」。
この奇妙な符号も、俺たちを驚かせた。
マックイーンが好走する時、なぜかこの3つの枠に絡む。 あるいは、自身がその枠に入り、 あるいは、その枠の馬を連れて馬券圏内に入った。
偶然?
いや、きっと必然だったんだろう。
京都の淀で、春の天皇賞を制したマックイーンも、5枠だった。
白い馬体が、"5枠"という数字に導かれるように、あの日も未来を掴み取った。
──だが。
その「枠」にまつわる運命は、秋、思いもよらぬ形で牙を剥くことになる。
この法則を知っていれば、メジロマックイーンでは、ほぼ負けなしです。
■メジロマックイーン──運命を導く「1・5・8枠」伝説
レース | 着順 | 騎手 | 枠連① | 枠連② | マックイーンの枠 |
---|---|---|---|---|---|
京都大賞典(GII) | 1 | 武豊 | 1 | 8 | 1 |
宝塚記念(GI) | 1 | 武豊 | 2 | 8 | 6 |
天皇賞(春)(GI) | 2 | 武豊 | 2 | 8 | 2 |
産經大阪杯(GII) | 1 | 武豊 | 3 | 7 | 7 |
天皇賞(春)(GI) | 1 | 武豊 | 4 | 5 | 4 |
阪神大賞典(GII) | 1 | 武豊 | 4 | 5 | 4 |
有馬記念(GI) | 2 | 武豊 | 1 | 5 | 1 |
ジャパンC(GI) | 4 | 武豊 | 2 | 8 | 3 |
天皇賞(秋)(GI) | 18(降) | 武豊 | 5 | 7 | 7 |
京都大賞典(GII) | 1 | 武豊 | 1 | 4 | 4 |
宝塚記念(GI) | 2 | 武豊 | 1 | 8 | 8 |
天皇賞(春)(GI) | 1 | 武豊 | 5 | 7 | 7 |
阪神大賞典(GII) | 1 | 武豊 | 4 | 6 | 4 |
菊花賞(GI) | 1 | 内田浩一 | 1 | 2 | 2 |
嵐山S(1500万下) | 2 | 内田浩一 | 3 | 5 | 5 |
大沼S(900万下) | 1 | 内田浩一 | 5 | 7 | 5 |
木古内特別(500万下) | 1 | 内田浩一 | 2 | 4 | 4 |
渡島特別(500万下) | 2 | 内田浩一 | 1 | 7 | 7 |
あやめ賞(500万下) | 3 | 村本善之 | 3 | 4 | 2 |
ゆきやなぎ賞(500万下) | 2 | 村本善之 | 2 | 5 | 5 |
4歳新馬 | 1 | 村本善之 | 6 | 7 | 6 |
第三章 秋の悲劇──天皇賞・秋 降着事件
東京2,000メートル。
スピードと持久力、そして一瞬の判断が問われる舞台。
ファンも、マスコミも、マックイーンに期待していた。
いや、もう期待というより、**「当然勝つだろう」**という空気だった。
白いシャドーロール。
優雅なストライド。
すべてが「完璧」に見えた。
しかし──
レース開始後、審議ランプが光った。
それでも、マックイーンはいつものように、中団からスムーズに進出し、直線で堂々と抜け出した。
「強い、強すぎるぞ、マックイーン!」
──勝った。
誰もがそう思った。
だが、釈然としない。
審議のランプが、消えない。
そして、その時。
江田照男が、不満そうに顔をしかめた──
えっ? と思った瞬間、場内に無情のコールが響いた。
「メジロマックイーン、18着に降着!」
一気に沸き起こる、悲鳴と怒号。
スタンドが揺れる。
勝ったはずのマックイーンが、まさかの最下位に沈められた。
これが、あの日の天皇賞・秋だった。
スタンドが悲鳴を上げた。
結果──
マックイーンは降着。
でも、枠連5-7で560円が的中した。
しかも、1着〜5着は、きれいに
1枠、5枠、8枠、7枠
この3枠+αで決まった。
──怖すぎるぞ、メジロマックイーン。
第四章 再び春へ──天皇賞・春 連覇の奇跡
翌年、春──
またも、淀(京都競馬場)に、あの白い閃光が戻ってきた。
天皇賞・春。
長丁場、3,200メートル。
これはマックイーンの、ホームグラウンドだった。
前年にトウカイテイオーを退けたこの舞台。
淀3,000を制する者が、春を制する。
そんな言葉が、現実になったのが──
このメジロマックイーンだ。
レースが始まる。
マックイーンは、いつもどおり淡々と進んだ。
焦らない、慌てない。
先行集団の後ろ、完璧な位置取り。
3コーナー、淀の坂を上る。
静かに、だが確実にギアが上がる。
あの大きなストライドが、じわじわと他馬を飲み込む。
そして、直線──
誰も、マックイーンに迫ることはできなかった。
あの時、京都競馬場が、白い波に飲まれた。
マックイーン、完勝。
天皇賞・春、連覇。
──この偉業を達成した馬は、歴史上でもほんの一握りだ。
第五章 2020年の有馬記念──マックイーンが教えてくれた
好きな馬がたくさん出る。
負けても、納得できる。
──そんなレースだ。
だが、2020年の有馬記念だけは違った。
あれほど「カンタン」なレースはなかった。
1番人気、クロノジェネシス。
単勝オッズは2.5倍。
圧倒的な人気馬だった。
でも──俺には、確信があった。
その日の阪神5R、
ウインストワグルが発走除外となった。
調教師は、熊沢重文。
──あの、ダイユウサクで、マックイーンを破った男だ。
運命が、静かに囁いた。
「来たぞ──天からの贈り物だ」と。
🐎
キャバクラの姉ちゃんにも言った。
「明日はクロノジェネシスだ。外れても半分補償してやる」と。
マックイーンが教えてくれたじゃないか。
大舞台では、流れを読め、と。
俺は、マックイーンのデータをめくり返した。
そう、思い出すべきは天皇賞・秋だ。
あの屈辱的な降着。
──でも、その周囲には、いつだって**「1枠」「5枠」「8枠」**がいた。
2020年の有馬記念、7枠には2番人気のフィエールマンがいた。
だが、万が一フィエールマンが降着したら?
──そう思った瞬間、マックイーンの幻影が笑った気がした。
だから俺は、もう一頭、7枠のサラキアに目を向けた。
そして、買った。
9番クロノジェネシス − 14番サラキア。
100円だけ。
それだけでよかった。
そして、結果──
万馬券 10,330円。
金額の問題じゃない。
運命を、読み切った。
🐎
あの時、俺の耳には確かに聞こえた。
「──俺を覚えてたら、いいことあるぜ」
メジロマックイーンが、微笑んだ気がした。
最終章 マックイーン、永遠に──
けれど、それは簡単に起きるものじゃない。
白いシャドーロール、
大きなストライド、
そして、1枠・5枠・8枠を導く運命の数字。
すべては、
メジロマックイーンが走り抜けた軌跡だった。
ただ速いだけじゃない。
ただ強いだけでもない。
──競馬に、物語を残していった馬。
たとえ降着しても、
たとえ負けたとしても、
そこには確かに、"何か"があった。
あの日、淀を駆け抜けた白い幻影。
その残した奇跡を、
2020年の有馬記念で、俺はもう一度感じた。
そして、確信した。
🐎 「競馬は、馬を賭けるんじゃない。
想いを、賭けるんだ。」
マックイーンは、教えてくれた。
勝つことも、負けることも、
すべてを受け止めて走る──
それが、誇りだと。
今も俺の中には、
あの白いシャドーロールが、静かに走り続けている。
ありがとう、メジロマックイーン。
君の走りは、100年先も、語り継がれる。
──Fin.
.